非上場株式(自社株)の評価見直しはどうなる?有識者会議の最新動向と経営者が今すべきこと【2026年10月更新】

「うちの会社の株、実はいくらの価値があるかご存じですか?」

上場していない会社(非上場会社)の株式には、決まった「時価」がありません。それでも相続や贈与、事業承継の場面では、税金を計算するために評価額を算出する必要があります。

そして今、この非上場株式の評価ルールが、1964年以来62年ぶりに見直される可能性が出てきています。本記事では、最新動向と、経営者・オーナーが今のうちに押さえておくべきポイントを解説します。

この記事の要点(2026年10月更新)

  • 国税庁は2026年4月から「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で、非上場株式(自社株)の相続税・贈与税評価の見直しを検討しています。2026年9月までに6回開催されました。
  • 第5回・第6回では、「残余利益方式」を軸にした見直し案のイメージと試算が示されました。
  • 2026年10月時点で、改正の内容と適用時期は決まっていません。

1. 非上場株式の評価が62年ぶりに見直しへ

2026年4月、国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上げました。非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法は、1964年(昭和39年)に定められた財産評価基本通達がベースとなっており、実に62年間、大きな見直しがされてきませんでした。

2026年10月時点で、国税庁は改正の内容や適用時期を示していません。第4回会議(2026年7月)では「今秋を目途に方向性を示す」方針が示され、見直しは税制改正のプロセスを経て行うこととされています。

2. なぜ見直されるのか

きっかけは、2024年11月の会計検査院の報告です。現行の評価方法(類似業種比準方式など)について、「会社の規模が大きいほど、株式の評価額が相対的に低く算定される傾向がある」という歪みが指摘されました。

本来、会社の実態に見合った評価がされるべきところ、現行ルールでは規模の大きい会社ほど評価額が下がりやすいという構造的な問題があり、これが今回の見直しの発端となっています。

会計検査院は令和5年度決算検査報告(2024年11月)で、評価方式の間で評価額にかい離があること、配当還元方式の還元率(10%)が金利水準に比べて高いおそれがあることを指摘しました。第1回会議では、類似業種比準価額が純資産価額の約4分の1にとどまるというデータも示されています。

3. 現行の評価方法のおさらい

非上場株式の評価方法には、大きく分けて3つの方式があります。

  • 類似業種比準方式:上場している同業種の会社の株価をもとに、自社の配当・利益・純資産を比較して評価額を算出する方法です。会社の規模が大きいほど、この方式のウェイトが高くなります。
  • 純資産価額方式:会社の総資産から負債を差し引いた純資産額をもとに評価する方法です。会社を清算した場合に近い評価となります。
  • 配当還元方式:少数株主(経営に関与しない株主)向けの簡易的な評価方法で、配当金額をもとに評価します。

どの方式を使うか、またはどう組み合わせるかは、会社の規模や株主の立場によって決まります。

4. 見直しでどう変わりそうか

第4回(2026年7月)で国税庁は6つの論点を示しました。評価方式の一本化と類似業種比準方式の廃止に賛成する意見が多く出ましたが、座長は「現時点で合意はない」と述べています。

第5回(2026年8月)では、残余利益方式を採用した場合のイメージが示されました。会社規模(大会社・中会社・小会社)による区分をなくして評価方式を一本化する案で、類似業種比準方式については「存置は困難ではないか」という問いかけがありました。

第6回(2026年9月)では、残余利益方式の具体案と、1,378社を対象にした試算が初めて示されました。特定の評価会社を4つの類型に整理する案も出ています。純資産価額方式、還元率、配当還元方式は次回以降の論点とされています。

残余利益方式とは:一般に、会社の純資産に、将来見込まれる「株主が期待する水準を上回る利益(残余利益)」の現在の価値を加えて株式の価値を求める方法です。

これらが実現すると、特に規模の大きいオーナー企業では、現行方式より評価額が上がる可能性があります。逆に言えば、現行ルールが適用される今のうちに、自社株の評価額と対策を確認しておく価値があるということです。

5. 有識者会議の各回のまとめ

各回の議論の内容は、回ごとの記事で詳しく整理しています。

回開催日主な内容
第1回2026年4月20日現行の問題点を確認。類似業種比準価額は純資産価額の約4分の1。評価額を圧縮するスキームの3類型を提示
第2回2026年5月11日税法上の「時価」、会社法、M&A実務の各立場から説明
第3回2026年6月4日日本商工会議所と日本税理士会連合会が事業承継への影響を説明。残余利益モデルが紹介された
第4回2026年7月3日国税庁が6つの論点を提示。座長は「現時点で合意はない」と明言
第5回2026年8月20日残余利益方式を採用した場合のイメージを提示
第6回2026年9月16日残余利益方式の具体案と、1,378社を対象とした試算を提示

6. 経営者は今、何をすべきか

制度がまだ確定していない以上、今すぐ何かを決断する必要はありません。ただし、次の3点は早めに着手しておくことをおすすめします。

  1. 現在の評価額を把握する:まずは現行ルールで自社株がいくらと評価されるのかを試算しておくことが出発点です。想定より高い評価額になっているケースは少なくありません。
  2. 事業承継税制(納税猶予)の活用を検討する:非上場株式を後継者に贈与・相続する際、一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税が猶予される事業承継税制があります。
  3. 専門家に早めに相談する:評価方法の見直しは今後も情報が更新されていきます。自社の状況に照らして「今どうすべきか」は、専門家に相談しながら判断するのが確実です。当法人の事業承継・M&A支援では、自社株評価から納税猶予の活用まで一貫してサポートしています。

私自身、事業を継ぐ側・継がれる側の両方を経験しており、経営者の立場から見た事業承継の悩みには実感を持ってお答えできます。数字や制度の話だけでなく、実際にどう進めていくかという視点も踏まえてご相談に対応しています。

よくある質問

Q. 非上場株式の評価ルールはいつから変わりますか?

決まっていません。2026年10月時点で、国税庁は改正の内容や適用時期を示していません。第4回会議では「今秋を目途に方向性を示す」方針が示され、見直しは税制改正のプロセスを経て行うこととされています。

Q. すべての会社が影響を受けますか?

特に会社規模の大きいオーナー企業ほど、現行方式より評価額が上がる可能性が指摘されています。小規模な会社への影響は今後の議論次第です。

Q. 今のうちにできる対策はありますか?

まず現行ルールでの自社株評価額を試算しておくことが出発点です。そのうえで、役員退職金の活用(利益と純資産の両方が圧縮され、評価額が下がります)や、事業承継税制(納税猶予)の適用を検討します。ただし退職金は金額と支給時期を誤ると効果が得られないため、給与と退職金どっちが良い? 社会保険と所得税の観点から検討 もあわせてご確認ください。

Q. 残余利益方式とは何ですか?

会社の純資産に、将来見込まれる残余利益(株主が期待する水準を上回る利益)の現在の価値を加えて株式の価値を求める方法です。有識者会議の第5回・第6回で、この方式を採用した場合のイメージと試算が示されました。採用が決まったわけではありません。

Q. 類似業種比準方式は廃止されますか?

決まっていません。第5回会議で国税庁から「存置は困難ではないか」という問いかけがあり、廃止に賛成する意見も多く出ていますが、座長は「現時点で合意はない」としています。

Q. 有識者会議はこれまで何回開かれましたか?

2026年4月20日の第1回から9月16日の第6回まで、6回開かれています。各回の内容は本記事内の一覧からご覧いただけます。

7. まとめ

非上場株式の評価方法は、1964年以来62年ぶりの大きな見直しが検討されています。2026年10月時点で改正の内容や適用時期は決まっていませんが、議論されている内容は、会社規模の大きいオーナー企業ほど影響を受けやすいものとなっています。

制度の詳細が固まるのを待つのではなく、今のうちに自社株の評価額を把握し、事業承継税制の活用も含めて対策を検討しておくことが、将来の税負担を左右する重要な一歩になります。

なお、最新の議論の状況は国税庁のホームページでも公開されています。
国税庁:取引相場のない株式の評価に関する有識者会議

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