非上場株式(自社株)の評価が62年ぶりに変わる?事業承継で今すべきこと
「うちの会社の株、実はいくらの価値があるかご存じですか?」
上場していない会社(非上場会社)の株式には、決まった「時価」がありません。それでも相続や贈与、事業承継の場面では、税金を計算するために評価額を算出する必要があります。
そして今、この非上場株式の評価ルールが、1964年以来62年ぶりに見直される可能性が出てきています。本記事では、最新動向と、経営者・オーナーが今のうちに押さえておくべきポイントを解説します。
1. 非上場株式の評価が62年ぶりに見直しへ
2026年4月、国税庁は「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上げました。非上場株式(取引相場のない株式)の評価方法は、1964年(昭和39年)に定められた財産評価基本通達がベースとなっており、実に62年間、大きな見直しがされてきませんでした。
現時点(2026年8月)ではまだ検討段階であり、制度が確定したわけではありません。ただし、有識者会議では従来より踏み込んだ議論が進んでおり、今後のスケジュールとしては以下のような見通しが示されています。
- 2026年4〜10月:有識者会議で具体的な改正案を議論
- 2026年末:2027年度税制改正大綱への反映を視野
- 2027年春:財産評価基本通達の改正案についてパブリックコメントを実施
- 2028年1月1日以後:改正後の新ルールが適用される可能性
つまり、早ければ2028年から、非上場株式の評価額の計算方法そのものが変わることになります。
2. なぜ見直されるのか
きっかけは、2024年11月の会計検査院の報告です。現行の評価方法(類似業種比準方式など)について、「会社の規模が大きいほど、株式の評価額が相対的に低く算定される傾向がある」という歪みが指摘されました。
本来、会社の実態に見合った評価がされるべきところ、現行ルールでは規模の大きい会社ほど評価額が下がりやすいという構造的な問題があり、これが今回の見直しの発端となっています。
3. 現行の評価方法のおさらい
非上場株式の評価方法には、大きく分けて3つの方式があります。
- 類似業種比準方式:上場している同業種の会社の株価をもとに、自社の配当・利益・純資産を比較して評価額を算出する方法です。会社の規模が大きいほど、この方式のウェイトが高くなります。
- 純資産価額方式:会社の総資産から負債を差し引いた純資産額をもとに評価する方法です。会社を清算した場合に近い評価となります。
- 配当還元方式:少数株主(経営に関与しない株主)向けの簡易的な評価方法で、配当金額をもとに評価します。
どの方式を使うか、またはどう組み合わせるかは、会社の規模や株主の立場によって決まります。
4. 見直しでどう変わりそうか
2026年8月時点の有識者会議(第5回)では、以下のような論点が具体的に検討されています。
- 会社規模区分(大会社・中会社・小会社)の廃止
- 類似業種比準方式のあり方の見直し
- インカムアプローチ(将来の収益力)を主軸とする評価への転換
- 残余利益方式の導入
- 純資産価額方式・配当還元方式の位置づけの見直し
これらが実現すると、特に規模の大きいオーナー企業では、現行方式より評価額が上がる可能性があります。逆に言えば、現行ルールが適用される今のうちに、自社株の評価額と対策を確認しておく価値があるということです。
5. 経営者は今、何をすべきか
制度がまだ確定していない以上、今すぐ何かを決断する必要はありません。ただし、次の3点は早めに着手しておくことをおすすめします。
- 現在の評価額を把握する:まずは現行ルールで自社株がいくらと評価されるのかを試算しておくことが出発点です。想定より高い評価額になっているケースは少なくありません。
- 事業承継税制(納税猶予)の活用を検討する:非上場株式を後継者に贈与・相続する際、一定の要件を満たせば贈与税・相続税の納税が猶予される事業承継税制があります。
- 専門家に早めに相談する:評価方法の見直しは今後も情報が更新されていきます。自社の状況に照らして「今どうすべきか」は、専門家に相談しながら判断するのが確実です。当法人の事業承継・M&A支援では、自社株評価から納税猶予の活用まで一貫してサポートしています。
私自身、事業を継ぐ側・継がれる側の両方を経験しており、経営者の立場から見た事業承継の悩みには実感を持ってお答えできます。数字や制度の話だけでなく、実際にどう進めていくかという視点も踏まえてご相談に対応しています。
よくある質問
Q. 非上場株式の評価ルールはいつから変わりますか?
2026年8月時点ではまだ検討段階です。早ければ2027年度税制改正大綱に反映され、2028年1月1日以後の適用が視野に入っていますが、確定した時期ではありません。
Q. すべての会社が影響を受けますか?
特に会社規模の大きいオーナー企業ほど、現行方式より評価額が上がる可能性が指摘されています。小規模な会社への影響は今後の議論次第です。
Q. 今のうちにできる対策はありますか?
まず現行ルールでの自社株評価額を試算しておくことが出発点です。そのうえで、役員退職金の活用(利益と純資産の両方が圧縮され、評価額が下がります)や、事業承継税制(納税猶予)の適用を検討します。ただし退職金は金額と支給時期を誤ると効果が得られないため、給与と退職金どっちが良い? 社会保険と所得税の観点から検討 もあわせてご確認ください。
6. まとめ
非上場株式の評価方法は、1964年以来62年ぶりの大きな見直しが進行中です。2028年1月以後の適用が視野に入っており、現時点ではまだ確定していないものの、会社規模の大きいオーナー企業ほど影響を受けやすい内容となっています。
制度の詳細が固まるのを待つのではなく、今のうちに自社株の評価額を把握し、事業承継税制の活用も含めて対策を検討しておくことが、将来の税負担を左右する重要な一歩になります。
なお、最新の議論の状況は国税庁のホームページでも公開されています。
国税庁:取引相場のない株式の評価に関する有識者会議
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