【第4回】取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(2026年7月3日)の内容まとめ
国税庁の「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の第4回が、2026年(令和8年)7月3日に開催されました。本記事では、公表された資料と議事要旨をもとに、第4回の議論の内容を整理します。
※本記事は国税庁の公表資料に基づく事実の整理です。評価方法の具体的な改正内容は、第4回の時点では決まっていません。
開催の概要
- 日時:2026年7月3日(金)10:00~12:00
- 場所:中央合同庁舎第4号館(WEB併用)
- 出席委員:13名
第4回では、これまでの委員意見を事務局が論点ごとに整理し、そのうえで「当局として御意見いただきたい事項」として6つの論点が示されました。
前回(第3回)からの変化・進展
- 論点の整理と6つの問いかけ:第3回(2026年6月4日)までに出た委員意見を、「時価の意義」「事業承継との関係」「スキームへの対応」「評価方式ごとの見直し」などに分けて整理し、事務局が6つの論点について委員の意見を求めました。
- たたき台の提示時期:事務局は、評価方法の見直しのたたき台(事務局案)を次回の第5回で示したいと説明し、座長もその進め方を提案しました。
- 今後の進め方:事務局は、見直しは税制改正プロセスを経て行うこと、今秋を目途に一定の方向性を示せるよう進めることを説明しました。
- シミュレーション:増減税の影響を示すシミュレーションについて、事務局は枠組みの方向性が見えた段階で実態調査データを用いて示したいと回答しました。委員からは、たたき台と同時に示すべきとの意見が出ています。
- 合意の有無の確認:座長は、現時点で評価方式の一本化や類似業種比準方式の廃止について合意はないと明言しました。
第4回で示された主なデータ・資料
事務局が意見を求めた6つの論点
- 企業価値評価の学術研究やM&Aの評価方法も参考に、抜本的な見直しも視野に検討すること
- 原則的評価方式の一本化を検討すること
- 今後の類似業種比準方式の在り方
- 純資産価額方式を基本的な評価方式とせず、特定の評価会社の評価方式として残すこと
- 配当還元方式について、還元率・計算方法に加え、対象株主の範囲や従業員持株会との関係も整理すること
- 少なくとも資産管理会社は純資産価額方式で評価すること
類似業種の指数の推移(平成30年末=100とした令和7年末の数値)
| 項目 | 令和7年末 |
|---|---|
| 日経平均 | 251.5 |
| TOPIX終値 | 228.2 |
| 類似業種の株価(A) | 140.0 |
| 類似業種の配当(B) | 204.3 |
| 類似業種の利益(C) | 159.4 |
| 類似業種の純資産(D) | 156.7 |
事務局の試算では、評価会社の配当・利益・純資産を平成30年と同じに固定した場合、類似業種比準価額は平成30年より1~2割程度下がりました。比較できる112業種ごとの分析では、7~8割の業種で評価額が減少したとされています。事務局は、上場株価の上昇が直ちに類似業種比準価額の上昇につながるわけではなく、同方式は予見可能性が高いとは言えないのではないかと説明しました。
一般株式等(非上場株式等)の譲渡所得の申告状況
上場株式等以外の株式等の譲渡について、直近5年間(令和3年分~7年分)の合計で、申告人員は延べ33.1万人、所得金額は15.4兆円でした。令和元年分と比べ、令和7年分は申告人員が2倍以上、所得金額が1.6倍以上に増えています。
参考として示された事例・資料
- 小規模宅地等の特例:もともと通達で評価減していた取扱いが、昭和58年度税制改正で法定化された経緯
- ドイツの例:非上場株式の評価上の優遇について2006年に違憲判決が出され、評価を通常価額で行ったうえで、事業用財産に85%以上の評価減特例を設ける形に改められた経緯
- 過去の通達改正:平成12年(比準割合1:3:1)と平成29年(1:1:1)の改正は、上場会社データの検証に基づくもので、事業承継への配慮のためではないとの説明
- スキーム事例:従業員の転籍で会社規模を変える、配当還元方式を使える株主を意図的に作る、オペレーティングリースで利益・純資産を減らすなど、評価額を圧縮する事例が8件紹介されました
委員から出た主な意見(議事要旨より)
見直しの進め方・事業承継との関係
- 学術研究やM&Aの評価方法を参考にすることに賛成する意見が多い一方、相続・贈与と売買は目的が違うので並べることに違和感があるという意見
- 評価の見直しと事業承継税制の拡充は同時に議論すべきで、評価だけが先行することに違和感があるという意見
- 60年以上ぶりの抜本改正となるなら、慎重な検討と十分な準備期間が必要という意見
- 時価は時価として算定し、税負担の調整は税制側で行うべきという意見
- 新方式で納税者の計算コスト(コンプライアンスコスト)が大きく上がることは避けるべきという意見
評価方式の一本化
- わずかな差で評価額が大きく変わる「評価の崖」は納税者間の公平を損なうため、一本化に賛成する意見が多数
- どのモデルにも得手不得手があり、対象外となる会社の扱いは丁寧に検討すべきという意見
- 一本化後の評価額が純資産価額を上回るのは疑問だという意見
類似業種比準方式
- 理論的・実証的な裏付けがなく、評価の崖の原因にもなっているため廃止した方がよいという意見が複数
- 簡便性や執行コストも考慮すべきで、代わりの方式をきちんと作れるかは別途検討が必要という意見
- 選択肢として残し、使われなくなった段階で廃止するという考え方もあるという意見
純資産価額方式・資産管理会社
- 資産を保有するだけの会社には純資産価額方式が適しているとして、存置に賛成する意見
- 引当金などの負債を控除できるようにする、事業用不動産は簿価とするなどの修正が必要という意見
- 計算の負担を考え、税務上の簿価を使うなど簡便な方法を検討してはどうかという意見
配当還元方式
- 評価の崖の観点からなくした方がよいという意見がある一方、納税者の事務負担の面では意義があるという意見
- 支配力の有無を適切に判定できるよう、対象範囲の見直しや持株割合による単純な判定を検討してはどうかという意見
- 還元率の引下げは、少数株式の買取業者による買取価格の引上げにつながるおそれがあるという意見
次回の予定
第5回は2026年8月20日(木)13:30から開催されると、後日事務局から各委員に連絡されています。第5回では、事務局から評価方法の見直し案の骨子(たたき台)が示される予定です。
よくある質問
Q. 類似業種比準方式の廃止は決まったのですか?
A. 決まっていません。第4回では座長が、評価方式の一本化や類似業種比準方式の廃止について現時点で合意はないと述べ、事務局も廃止を決定したわけではないと説明しています。
Q. 評価方法の見直しは、どのような手続きで決まりますか?
A. 事務局は、今回の見直しは税制改正プロセスを経て行うと説明しています。今秋を目途に一定の方向性を示せるよう進めるとしていますが、具体的な改正内容や適用時期は示されていません。
Q. 株価が上がっているので、自社株の評価額も上がっているのですか?
A. 事務局の試算では、評価会社の財務内容が同じと仮定した場合、平成30年と比べて類似業種比準価額は1~2割程度下がる結果でした。ただし、実際の評価額は各社の配当・利益・純資産の変化によっても変わります。
出典
- 国税庁 第4回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 資料・議事要旨
- 国税庁 第3回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 議事要旨
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