【第1回】取引相場のない株式の評価に関する有識者会議(2026年4月20日)の内容まとめ

国税庁は2026年(令和8年)4月、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上げました。非上場株式(自社株)の相続税・贈与税の評価方法を見直すための会議です。本記事では、第1回会議(2026年4月20日開催)で公表された資料と議事要旨をもとに、議論の内容を整理します。

※本記事は国税庁の公表資料に基づく事実の整理であり、評価方法の改正内容や時期は現時点で決まっていません。

会議が開催された背景

きっかけは、会計検査院の令和5年度決算検査報告(2024年11月)での指摘です。主な指摘は次の2点でした。

  • 評価方式の間で評価額に大きなかい離があり、類似業種比準価額を適用する割合が高い「規模の大きな会社」ほど、株式の評価額が相対的に低く算定されている
  • 配当還元方式の還元率(10%)が、近年の金利水準と比べて相対的に高いおそれがある

国税庁はこの指摘を踏まえ、「相続税法の時価主義の下、適正な評価制度の在り方を検討する」として有識者会議を開催しています。

委員構成

委員は13名で、座長には佐藤英明委員(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)が就任しました。構成は、大学教授(法学・会計学・経営学)、日本税理士会連合会、日本商工会議所、元国税庁長官、M&A仲介会社の役員などです。オブザーバーとして中小企業庁と全国商工会連合会が参加しています。

第1回で示された主なデータ

類似業種比準価額は純資産価額の約4分の1

国税庁は、令和4年分・5年分の相続税・贈与税の申告を対象に独自の実態把握を行いました。対象は、類似業種比準価額と純資産価額の両方を算出している700社です。

項目国税庁の実態把握会計検査院(参考)
類似業種比準価額の中央値 ÷ 純資産価額の中央値約26.1%27.2%
1社ごとの比率(類似÷純資産)の中央値0.27倍―
比率が0.5倍未満の会社の割合77.6%77.9%

会計検査院の指摘とほぼ同じ傾向が、別の年分でも確認された形です。

評価額を圧縮するスキームの類型

資料では、評価額を「操作」できてしまう課題として、次の3つの類型が挙げられました。

  1. グループ法人税制の利用:100%グループ内で資産を子会社・孫会社へ移転し、親会社株式の評価額を下げる
  2. 種類株式(無議決権株式)の利用:議決権を後継者に集約し、一部の親族が配当還元方式を適用できるようにする
  3. 超過収益力の社外流出:所有と経営が一致しているため、利益を役員報酬などで流出させ、類似業種比準価額の要素(利益・配当)を小さくできる

こうしたスキームには、これまで財産評価基本通達6項(総則6項)などで個別に対応してきました。一方で資料では、総則6項をめぐる訴訟が増えていることや、納税者の予見可能性に課題があることにも触れています(最高裁令和4年4月19日判決、日税連の建議書・日本公認会計士協会の意見書を引用)。

その他の資料

  • 評価方式の変遷(昭和39年の通達制定から平成29年の改正まで)
  • 会社法の制定、組織再編税制、グループ法人税制、事業承継税制など、周辺制度の変化
  • 中小企業のM&A件数の推移(2021年度1,514件 → 2023年度2,023件)
  • 諸外国(米国・ドイツなど)の税務上の評価方式の比較

委員から出た主な意見(議事要旨より)

現行の評価方法の問題点

  • 会社規模などの外形基準が評価額圧縮スキームに使われている。できる限り幅広い企業に統一的に適用できる評価方式を検討してはどうか
  • スキームが使われる根本原因は、純資産価額が高すぎることではないか
  • 上場会社の株価を基準に非上場株式を評価すること自体に問題があるのではないか
  • 評価通達186-2(2)は、組織再編税制の導入で事実上適用場面がなくなっており、撤廃すべきではないか

各評価方式について

  • 純資産価額方式は、他の資産との公平性の面で優れているという意見
  • 清算を前提とする純資産価額で継続企業を評価するのはおかしいという意見
  • インカム・アプローチ(収益方式)による評価を検討すべきという意見
  • 会計検査院の比較はコロナ禍の株価低迷期のデータであり、現在の株価水準で議論すべきという意見
  • 配当還元方式の還元率の引下げには賛成しつつ、従業員持株会の設立や少数株主の整理が難しくなるおそれがあるという意見

見直しの方向性

  • 円滑な事業承継という観点も踏まえるべき
  • 客観的な「時価」の評価と、税負担の在り方(税率・基礎控除・事業承継税制など)は分けて議論すべき
  • スキームへの対応によって、真面目に経営してきた企業が不利益を受けないよう配慮すべき

次回の予定

第2回は2026年5月11日に開催されることが、会議の最後に事務局から伝えられました。

よくある質問

Q. 評価方法はいつから変わりますか?

A. 第1回の時点では、改正の内容も時期も示されていません。今後の会議の動向を確認する必要があります。

Q. この会議の資料はどこで見られますか?

A. 国税庁ホームページの「研究会・懇談会等」で、各回の資料と議事要旨が公表されています。

出典

  • 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の開催について(令和8年4月16日)
  • 国税庁 第1回 取引相場のない株式の評価に関する有識者会議 資料・議事要旨・委員名簿

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