「節税」と呼ばれる手法に注意!本当に得をするのか?

「節税」という言葉には注意が必要です。

一般に「節税」と呼ばれている手法の多くは、適切なものもあります。
そうした手法には以下のような問題点があります。

  1. 手元の資金が減っている場合
    節税を名目に行った投資などで、結果的に資産や収入が減ってしまうケースがあります。
    税金は減っても、実際の財産が目減りしては本末転倒です。
  2. 将来の課税の繰延である場合
    一時的に税金は軽減します。
    しかし、後年度に過去分の税金を払う手法は、課税の先延ばしとも考えられ、結局は同じ税負担となります。
    ただし、良い点もあるので、後述いたします。
  3. 適正な経費処理を行っているだけの場合
    事業や投資による適正な経費について、適切に控除を受けているだけであれば、これは節税とは呼べません。
    本来あるべき申告を行っているにすぎません。

このように、「節税」と称される手段には、注意すべき内容が多く含まれています。
健全な納税が基本であり、不適切な手段に走ることは絶対に避けましょう。

1. 手元の資金が減っている場合

一部の「節税」と称される手法は、実質的には無駄な出費を生んでいるだけのケースがあります。
このような場合、税金は一時的に減少しますが、結果として手元の資産や収入が減る点に注意が必要です。

具体例を2つ挙げます。
例えば、決算直前に不要な高額備品や消耗品を購入し、経費として計上することがあります。
100万円の消耗品を購入すれば、おおよそ30万円の税金が減りますが、実質的には70万円の出費になっているに過ぎません。

その他に、中古車を購入し、残存年数に応じて減価償却の期間を短縮する手法もあります。
結果として早期に減価償却費を計上しただけで、数年後には減価償却がゼロになります。
さらに、売却時の価値も下がることも多いため、資産が目減りする可能性が高いといえます。

このように、一時的な節税を目的とした無駄な出費は、本来の目的を逸脱しています。
適切な経費の範囲内で節税を図ることは構いませんが、無理な出費を強いることは避けるべきです。

健全な事業運営が何より重要であり、節税は副次的な効果にすぎません。

2. 将来の課税の繰延である場合

税金の計算は原則として1年単位で行われるため、その年の支払い税額を一時的に減らす手段があります。
しかし、それらの多くは単に納税時期を先送りにしているだけにすぎません。

具体例をいくつか挙げます。

価値の下がらない中古車を購入し、短期間で減価償却することで経費を計上する場合もあります。
しかし、数年後に売却すると売却益が発生し、結果的に税金が課されるだけです。

積立型の生命保険も同様で、解約時の解約返戻金が将来の課税対象所得となります。
さらに返戻金割合が高いほど、経費計上できる割合は低くなります。

倒産防止共済の掛金についても、40か月を経過すると元本が保証されます。
掛金は経費に計上できますが、返金時の利益が課税されます。

また、1年分の家賃など経費を前払いすれば、当期の経費が大幅に増えます。
しかし、翌期以降の経費計上額は控除されるため、結局は同額の収入と支出が発生するだけです。

このように、多くの一時的な「節税」は単なる時間差の調整に過ぎず、最終的な税負担額は変わりません。
健全な経営を旨とするなら、このような手法には注意が必要です。

3. 適正な経費処理を行っているだけの場合

適正な経費の計上であれば税負担が軽減される場合もあります。
これは本来の適正な申告を行っているにすぎず、「節税」とは呼べません。

個人事業主の場合、事業と私的な使途が混在する経費については、適切に按分し事業分の経費として計上できます。
具体的には自宅兼事務所の家賃や光熱費、自動車の利用経費などがこれに当たります。
これらをきちんと仕分けすれば、適正な経費計上となり税負担が軽減されます。

また、月次決算の場合、経費の計上時期に注意が必要です。
会計の原則では、サービスを受けた期間の経費としなければなりません。
しかし、実務上支払い時の経費計上がなされることも多くあります。
この処理を適正化した場合、初年度のみ経費計上が1か月分多くなり、税負担が軽減されます。
ただし、翌年度以降は適正な計上となるため、同じ負担に戻ります。

いずれも本来の適正な申告による結果であり、不適切な手段を講じているわけではありません。
健全な経理処理を心がけることで、適正な税負担となるということです。

4. 「節税」には注意が費用な理由

いわゆる「節税」と称される手法の多くは、実質的には無駄な出費を生んだり、単なる時間の調整に過ぎないケースが多くあります。
一時的な税負担軽減を目的とするあまり、本末転倒な行為に走ってしまう危険があります。

確かに納税時期を先送りにできる手段はありますが、それには資金的な裏付けが必要不可欠です。
税金の支払いを延期するためには、当面の資金が確保できなければなりません。
しかし、目先の一時的な節税のために過度な出費を強いられれば、かえって企業体力を蝕む結果となりかねません。

健全な経営を持続するためには、まずは適正な納税を旨とすべきです。
しっかりと納税を行い、手元資金を蓄積することで、金融機関からの信用を高め、安定した資金調達が可能になります。
こうした基盤があれば、本来の事業運営に専念できるはずです。

「節税」を奨励すれば専門家としての収益は一時的に上がるかもしれませんが、それは企業経営の本質を見失った行為と言えます。
起業の理念や目標に立ち返り、健全な企業活動を貫くことが何より重要です。

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